● 第2話 『私、ここにいたい』 (4) |
□ 民宿ダイヤモンドヘッド前 | |
一夜明けたダイヤモンドヘッド。富士子の見送りに広海が出てくる。 | |
広海 | 「悪かったな。」 |
富士子 | 「みんな来たらどうするの?」 |
広海 | 「追い返す。ほらしょうがないだろ。」 |
富士子の真っ赤なビートルに荷物を詰め込む広海。続いて海都と桜も出て来る。ビートルに乗り込む富士子。 | |
海都 | 「富士子ちゃん、悪いね。」 |
富士子 | 「ううん。」 |
ビートルに乗り込む桜。 | |
海都 | 「じゃ。」 |
桜 | 「うん。待ってるね。」 |
うなずく海都。 | |
富士子 | 「じゃあねー。」 |
出ていく富士子達。見送る海都と広海。 | |
広海 | 「ちゃお〜。ば〜い。」 |
車が行くと、先に建物の中に入る広海。海都も続いて入ろうとして、薪割りの斧が目に入る。 | |
□ 民宿ダイヤモンドヘッド 厨房 | |
皿を洗おうとする広海。と、外から薪割りの音が聞こえてくる。振り向く広海。 | |
□ 民宿ダイヤモンドヘッド 前 | |
海都が一心不乱に薪割りをしている。中から広海が出てくる。 | |
広海 | 「なーにしてんのー?」 |
海都 | 「・・・・・・。」 |
薪割りを続ける海都。勝も中から出てくる。 | |
勝 | 「おーい何やってんだ?そんなにどうするつもりだ?」 |
海都 | 「・・・知りません。」 |
勝 | 「あん?何だって?」 |
海都 | 「知りません。薪見てたらやりたくなったんです。だからやってるだけ。どうするかなんて考えてません。」 |
広海 | 「どうしたんだよ。」 |
海都 | 「なにがシンプルイズベストだよ。今更なにが真琴のためにはそれがいいだ。・・・ふざけんなよ。ふざけんな!」 |
広海 | 「おい!」 |
斧を投げ捨てる海都。 | |
海都 | 「あなたがここをやめたいんだったら話は別ですよ。でも、たとえかわいい孫だろうがなんだろうが、誰かのためになんて言って欲しくないんです。」 |
勝の方を向く海都。 | |
海都 | 「だいたいどうして真琴ちゃんの好きにさせてやんないんですか。彼女が自分で決めればいいじゃないですか。社長も自分で自分のこと決めてきたんでしょ。今まで好き勝手やって生きてきたくせに、最後まで全うして下さいよ。・・・それがどんな結果になっても・・・見本を見せて下さい。」 |
広海 | 「・・・・・・。」 |
勝 | 「話はそれだけか?」 |
だまってうなずく海都。 | |
勝 | 「終わったら片づけとけよ。」 |
建物に戻っていく勝。 | |
広海 | 「・・・・・・。」 |
海都 | 「・・・・・・。」 |
□ スナック渚前 | |
春子が中からビールを持って出てくる。渚前のベンチに座って、海を眺めている勝。勝にビールを渡す春子。 | |
勝 | 「おう、わりーな。」 |
勝の隣に腰掛ける春子。ビールを飲み干す勝。 | |
勝 | 「なあ春子。」 |
春子 | 「なに?」 |
勝 | 「いやお前だったらさ、どう思うかと思ってよ・・・」 |
春子 | 「(微笑んで)そう言うこと私に聞く?真琴の気持ちも慶子さんの気持ちも解るから?」 |
勝 | 「いや、そういう意味じゃねんだけどさ。」 |
春子 | 「いずれにしろ、離婚した場合はさ・・・悪いのは親だよ・・・。」 |
勝 | 「・・・悪かった。」 |
春子 | 「ううん。」 |
勝 | 「いやー、しかしさ、悔しいよな。」 |
春子 | 「何が?」 |
勝 | 「ん?いや、あんなな、若造によ、言いたい放題言われちまってよ、ったくもうーちきしょーめー。(舌打ちしながら)ああ、悔しい悔しい。」 |
立ち上がる勝。わけの解らない春子。 | |
勝 | 「春子、ちょっと電話借りるぞ。」 |
春子 | 「はい。」 |
□ 民宿ダイヤモンドヘッド 前 | |
まだ薪割りを続けている海都。それを見ている広海。 | |
広海 | 「かっこよかったよ。」 |
海都 | 「ちゃかすな。」 |
広海 | 「ちゃかしてなんかないよ、ホラ、本気でかっこよかったって言ってんじゃん。」 |
海都 | 「うるさいよ。」 |
笑う広海。薪を割り続ける海都。見つめる広海。やがて、海都の隣に立ち、薪割りを始める広海。きれいに二つに割れる薪。 | |
広海 | 「あのさ、薪って言うのはこうやって割るんだ。」 |
うまく薪を割ってから、海都を笑う広海。 | |
広海 | 「チャー・シュー・メーン!解る?」 |
勝 | 「まーだやってんのかお前ら。」 |
振り向く広海と海都。勝と春子が立っている。 | |
□ 真琴の通学路の踏切 | |
高校の帰り道。真琴と祐介裕子が歩いている。 | |
裕子 | 「(ふてくされて)なーんかさー、やっぱもうこうやって一緒に帰れって思うとさー。」 |
真琴 | 「なーに言ってんの。別に外国行っちゃうワケじゃないんだから、ね!」 |
裕子 | 「うん。」 |
祐介 | 「・・・真琴。」 |
真琴 | 「ん?」 |
祐介 | 「俺に、任せろ。」 |
真琴 | 「は?」 |
祐介 | 「俺に任せろって言ってんだ。先に行くぞ。」 |
駆け出す祐介。 | |
真琴 | 「あ、おーい!どこ行くの・・・。」 |
追いかける真琴と裕子。踏切が鳴る。 | |
□ 民宿ダイヤモンドヘッド 前 | |
前では広海、海都、勝、春子が薪割りをしている。そこへ肩を怒らせて近づいてくる祐介。追いかけてくる真琴と裕子。 | |
春子 | 「祐介!」 |
祐介 | 「(勝に向かって)あの、お話があります。」 |
真琴 | 「ちょっと祐介!」 |
祐介 | 「僕は、この民宿が好きです。お願いです。考え直して下さい。」 |
一同 | 「・・・・・・。」 |
祐介 | 「真琴は、ここにいるべきだ。ここが一番似合うんです。お願いします!(頭を下げる祐介)閉めないで下さい。」 |
真琴 | 「・・・祐介・・・。祐介、もういいの!」 |
祐介 | 「よくないよ!」 |
その様子を見て、声をあげて笑う春子。 | |
祐介 | 「何がおかしいんですか?」 |
広海 | 「だから!もう、その話もう終わったの!」 |
祐介 | 「いや終わってないっすよ!」 |
広海 | 「だからもうわかんないヤツだよねーこの人ねー全くー。」 |
海都 | 「真琴ちゃんいい友達持ってんだね。」 |
勝 | 「おい。」 |
広海 | 「はい?」 |
勝 | 「バーベキューの準備しろ。」 |
広海 | 「え?」 |
勝 | 「俺が本物のバーベキュー教えてやるよ。」 |
建物へ戻っていく勝。 | |
広海 | 「二日続けてですか?」 |
はっとして振り向く真琴。 | |
真琴 | 「おじいちゃん!?」 |
勝 | 「真琴、お前の好きにしろ。」 |
真琴 | 「え?じゃあ・・・。」 |
勝 | 「慶子には電話しといたよ。」 |
ぱっと表情が明るくなる真琴。 | |
真琴 | 「・・・おじいちゃーん!」 |
喜んで勝に抱きつく真琴。 | |
真琴 | 「大好き!」 |
勝 | 「(よろめきながら)やめろお前・・・。」 |
広海 | 「真琴!俺にも来い!」 |
腕を広げる広海。声をあげて駆け寄ろうとして途中で止まる真琴。 | |
真琴 | 「きゃー!・・・なんて言って行くわけないでしょバーカ!」 |
とても嬉しそうに笑う真琴。 | |
真琴 | 「早く行こ!」 |
勝の手を取って建物に戻る真琴。 | |
広海 | 「すっげーむかつくあいつ。」 |
祐介 | 「あのー・・・?。」 |
広海 | 「なに?なに!いいよ、お前も手伝えホラったく。」 |
黙ってついていく祐介。 | |
春子 | 「裕子ちゃんも来な。」 |
裕子 | 「はーい!ラッキー!」 |
みんな中に入っていく。最後に入ろうとした海都に勝が言う。 | |
勝 | 「おい、そこのビジネスマン!お前も手伝うんだよ。」 |
笑顔のまま無言でうなずく海都。 | |
□ 民宿ダイヤモンドヘッド 前 | |
浜辺ではみんなでバーベキューの準備が始まっている。アメリカ式の本格的なバーベキューの肉を味見する勝。 | |
勝 | 「よーし食っていいぞ。」 |
肉の周りに集まっていく一同。その様子を、建物から出てきた春子と真琴が幸せそうに眺める。その時、中の電話が鳴る。 | |
真琴 | 「あ、私出る。」 |
春子 | 「本当?」 |
お盆を春子に渡して中に戻っていく真琴。浜辺ではみんなでおいしそうに肉を食べている。 | |
海都 | 「(肉を一口かじって)うまい!うまい、これ、昨日と全然・・・。」 |
広海 | 「何ですって!?」 |
勝 | 「あれで金取っちゃいかんよ。」 |
真琴 | 「鈴木海都さん!」 |
真琴が建物のデッキから海都を呼ぶ。振り向く海都。 | |
真琴 | 「お電話です!」 |
海都 | 「え?」 |
真琴 | 「電話!」 |
広海 | 「ほら電話電話!」 |
建物の中へ走っていく海都。 | |
□ 民宿ダイヤモンドヘッド 居間 | |
居間の電話に走り寄る海都。受話器を取る。 | |
海都 | 「はい鈴木ですけど。」 |
□ 海都の会社のオフィス | |
桜 | 「山崎ですけど・・・今部長と代わるね。・・・部長、3番に鈴木さんです。」 |
□ 民宿ダイヤモンドヘッド 居間 | |
海都 | 「ああ部長・・・。」 |
そこへ広海が何かを取りに戻ってくる。 | |
広海 | 「いやいやいやいや・・・ええと・・・。」 |
海都 | 「・・・はい・・・はい・・・そうですか、はい解りました。はい、失礼します。」 |
ガチャリと受話器を置く海都。しばらく空を見つめる。 | |
広海 | 「どうかした?」 |
海都 | 「・・・俺・・・帰る。」 |
広海 | 「え?」 |
海都 | 「・・・休みは・・・終わり。」 |
広海 | 「・・・・・・。」 |
海都 | 「・・・・・・。」 |
失笑する海都。 | |
広海 | 「・・・そっか。」 |
海都 | 「うん。」 |
広海 | 「・・・・・・。」 |
□ ――TO BE CONTINUED―― |