● 第一話 『夏、変なヤツがやってきた、同時に二人も』 (1)
□ 南の島の浜辺にて
美しい海が広がる南の島の浜辺。
少女が手紙を書いている。
少女の周りに他の子供達も集まってくる。
少年が手紙の最後に何かサインをする。
少女は手紙を小瓶に入れると軽くキスをして、岬の先端から海へ小瓶を放り投げる。
流されていく小瓶を見つめる少女。
波間を漂う小瓶。
□ 東京の街の、とある道路際
一台の車が、駐車違反でレッカー移動されている。
そのまま車は立体駐車場に運び込まれる。
駐車場のエレベーターで車の中で寝ていた男が気がついて起きあがる。
広海「おい、なんだこれ。とめて!とめて!!」
車は駐車場の最上階まで運ばれる。
広海「おいおいおい、なんだよこれ!(車から降り下の管理人に向かって)おーい!おーい!ここここここ!」
駐車場の管理人は寝ていて気がつかない。
広海「あちゃー、寝てるよ。」
ため息をつく広海、顔の傷を柱にぶつける。
広海「いてっ!」
数日前のことを思い出す広海。 
□ 富士子のアパート前(回想) 
広海「よせってお前!わかった、ちょっちょっちょっと待て・・・・。」
階段から転げ落ちる広海。
広海「あ、あ〜痛て〜。」
見下ろす富士子
広海「あのさ、ホラ、話し合おうよ。」
富士子「ここはわたしの部屋。わたしが出てけって言ってるんだからあなた出ていくしかないっしょ。」
広海「その身も蓋もない言い方!」
富士子「あのさ広海、もちょっと人生考えた方がいいと思うよ。」
広海「え?考えてるよ、俺だって。」
富士子「じゃなんでヒモなわけ?」
広海「富士子がそうしろって言ったんだろ。」
富士子「そう、私が言った。だから私がやめるの。もう決めちゃったの。」
広海「決めちゃった?」
富士子「そう。」
広海「最後にお金貸して!」
広海をにらみつける富士子。また広海を突き落とす。
広海「あ、あ、あ〜」
□ 立体駐車場 
ため息をつき、横たわる広海。伸びをする。
□ 海都のマンションのベランダ。
ベランダに立ちぼんやり外を眺める海都。
□ 海都の会社(回想)
取引先と電話で話をしている海都。
海都「What? Wait,Wait! Listen! Hello? もしもし?もしもし!」
電話は一方的に切られる。海都に注目する同僚達。
頭を抱える海都。心配そうに見つめる桜。
海都「申し訳ありませんでした。私のミスです。」
部長「もういい、わかった。私の方で何とかする。
海都「ご迷惑かけました。」
部長「悪いが今回のプロジェクトからははずれてもらうよ。」
海都「えっ?」
部長「いいんだそれで。丸く収まるから。」
海都「いやちょっと待って下さい!」
□ 海都のマンション
外を眺めていた海都、何かを決意したようにタバコを消し、旅行カバンのチャックを閉める。
鍵を持ってマンションを出ていく。
□ ガソリンスタンド
小銭を数える広海。千円に少し足りない。
広海「996、7、8・・・。まいっか。」
スタンドの店員「ちょうど千円分入りました。」
広海「あ、これ。(小銭をわたす広海)」
スタンドの店員「はい、ありがとうございます。」
広海「はい。」
小銭を数えようとする店員。
広海「あ、そんな数えなくてもさ。千円あるから。」
スタンドの店員「はい。」
それでも小銭を数え続ける店員。
広海「(焦って)ねえ!ねえ!今ね、ホラ、何処でも好きな所に行っていいって言われたら、何処行く?」
スタンドの店員「俺っすか?そうっすね〜、夏っすからね〜。」
広海「そうだよね、夏だよね。」
スタンドの店員「うーん、夏っすよね〜。」
空を見上げる店員。
広海「(一緒に空を見て)何処?」
□ 高層ビル内の喫茶店
眺めのいい喫茶店で向かい合って座っている海都と桜。
「休み?」
海都「うん。」
「今日から?」
海都「うん。ちょうどいい機会って言うのも何だけどホラ、休みずっととってなかったから。一足早い夏休み。」
「どっか行くの?」
海都「うーん、まだ行き先は決めてないけどね。」
突然海都の時計のアラームが鳴る。
「中東市場の時間だ。」
海都「うん。」
「夏やすみかぁ。いいかもね。」
海都「うん。(笑顔でうなずく)」
□ 海へと向かう電車 
車内で本を読んでいる海都。それに並行して走る広海のルノー。
広海のルノーに気がつく海都。
音楽を聴きながら運転しているご機嫌な広海。サンルーフから腕を振り上げる。
踏切でルノーを追い越す電車。
満足げな海都。再び本に目をやる。
再び追いついてくるルノー。のんきにタバコを吸っている広海。
ルノーを見つめる海都。追い越し追い越される。
その時ルノーのエンジンが止まって車が動かなくなる。
海都「よっしゃぁ!」
喜び立ち上がった弾みで天井の荷物置きに頭をぶつける。海都に注目する車内の客。再び座り込む海都。
□ 海が見えるルノーのエンスト現場
目の前の海に気がつく広海。おもむろに腕時計をはずす。そしてそれを海に放り投げる。
広海「夏はやっぱ、海だね。」
□ オープニングタイトルへ

(2)へ続く



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